漫画の新たなる挑戦
現在、一番大好きな漫画家の井上雄彦氏の『最後のマンガ展』を観に行ってきました。
詳しくは、公式ホームページhttp://www.flow-er.co.jp/ (または、上野の森美術館ホームページ http://www.ueno-mori.org/top.html)をご覧下さい。
井上氏は、 「スラムダンク」・「バガボンド」・「リアル」のメガヒット作品を描いた漫画家です。
単に売れた作品を描いただけではなく、第4回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞受賞・第24回講談社漫画賞一般部門受賞・第6回手塚治虫文化賞マンガ大賞受賞を受賞するなど、作品の評価も高い漫画家です。
今回出展された作品は、すべて「バカボンド」を題材にした新作です。
「バカボンド」は、吉川英治原作の「宮本武蔵」を下敷きに描かれました。
題名の「バガボンド(vagabond)」は、“放浪者”・“漂泊者”・“流浪人”という意味です。
この不思議な題名は、作者が、読者の読む前の先入観を望まなかったからだそうです。
侍を主人公にしているので、切り合う場面も多数あります。そのため、好き嫌いもあると思います。
話を個展にもどします。
上野の森美術館の展示会場の空間すべてを、漫画という視点で表現した、今まで見た事のない展示でした。
この作品では、ペン画以上に墨絵を多用しています。
現代書道の力強さや自由さを存分に感じる線と、日本画のような緻密で繊細な線で構成されています。
漫画は一枚絵ではなく、連画です。
ある絵では、消え入りそうな薄い墨で、ある絵では、観るものを離さない力強い濃淡で描かれています。
絵だけでなく、照明や壁の凹凸、階段の上り下りまでも、
作品を表現するための素材として工夫していました。
観終わった後、心から満足感にあふれました。
漫画の可能性は、まだ広がってゆく、そう実感できました。
井上氏の作品、特に「バカボンド」が好きな理由・・・。
それは、新しい技術に常に挑戦する姿勢です。
誰でも、新しい事への挑戦は、勇気がいるものです。
だから人は、自分のスタイルができると、新しいやり方を挑戦しようとは、なかなかしなくなるものです。
彼の絵や漫画の表現はすでに、漫画界のトップクラスのレベルにあります。
しかし、「バカボンド」での表現は、今まで培ってきた技術を捨てた所から始まりました。
新しい事への試みは、ゼロからの出発です。
どんなに不安があったでしょう。
勇気がいったでしょう。
才能、その一言では片付けられない、漫画に対する愛情と意欲を感じます。
良い作品に出会うたび、もっと自分も頑張ろう。
そんな気持ちにさせてくれます。
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