学校の美術教育の役割と授業数の減少
小学校での図画工作、中学校での美術の授業数は年々減り続けています。
学習指導要綱の改定に伴う授業数の変化を紹介します。( )内の数字は全授業数に対する割合です。
昭和22年 小学校 525~560(9.4~9.5%)
昭和22年 中学校 210(7%)
昭和33年 小学校 452(7.8%)
昭和33年 中学校 140(4.2%)+選択教科
昭和43年 小学校 452(7.8%)
昭和44年 中学校 175(5.0%)+選択教科
昭和52年 小学校 418(7.2%)
昭和52年 中学校 175(5.6%)+選択教科
平成元年 小学校 418(7.2%)
平成元年 中学校 140~175(4.4~5.6%)+選択教科
平成10年 小学校 358(6.7%)
平成10年 中学校 115(3.9%)+選択教科
一番多い時期に比べて図画工作の授業数は36%、美術の授業数は45%も減少した事になります。また、授業数の減少により、専門の免許を持っている先生も減少し、専門外の先生による授業も増えています。
そもそも学校の中での美術教育の役割とは何か?
学習指導要領を見ますと、「生活や社会の中の形や色などと豊かに関わる資質・能力を育成することを目 指す」とあります。
たしかに言っていることは正しいけど、・・・ ちょっとどうかなと思う所もあります。
学校での究極的な教育の目的は、「身につけることができる」ようにすることを目指すことです。もちろん、主要教科はそれが大事だと思います。
でも、図画工作・美術・音楽・体育などはそこに意味があるのでしょうか? 将来その道に進む子は、進学で専門の学校へ進めばよいでしょう。
しかし、そうでない子たちは、日常で「美」を楽しむための興味のきっかけになるように、「できる」てはなく「楽しめる」、それをを教えることが大切だと私は考えています。
以前教育関係のサイトにて、子供の好きな教科・親が好きな教科を調べた調査結果を見たことがあります。時々他の教育関係のサイトでもこのような調査結果を発表していますが、似たような傾向があります。
親御さんが好きな教科は、数学・理科などの主要教科。理由のアンケートで一番多かったのは、「受験に役立つから。」当然な答えです。残念ながら図画工作は下位の方にありました。・・・・。
では、子供の好きな教科はと言うと、図画工作は1位でなかったものの上位にありました。理由のアンケートで一番多かったのは、「自分が好きなものを作れるから。」でした。
主要教科は、答えが決まっています。どのようにその答えを導き出せるか、それが大切です。
しかし、図画工作・美術は、正解が決まっていません。自分だけが持っている答え見つけるためにを、いろいろ試してみる。結果がすべてではなく、その過程で失敗をふくめていろいろな挑戦する体験が大切なのです。
同時に、自分だけの表現を発見したり、二者択一ではなく多様性を学ぶ事で他の人の個性や価値観を理解し尊重する考えを持てます。
人間関係・学校や仕事・ネットを含めた社会、日常のすべてのことには答えはありません。図画工作・美術は、より良い選択を見つける能力、そんな創造力を身につけるられる特別な教科だと思います。
もちろん、制作は美しいものや魅力的なものを表現する作業なので、日常や自然の中でたくさんの「美しい」を見つける力も身につけられます。この力は、日常や人生をきっと楽しくて素敵なものにしてくれるはずです。
日本の美術教育の授業がこれだけ減ってきたのは、日本政府が他外国に比べて芸術教育への関心が著しく低いためにほかなりません。コロナ渦の状況での芸術関連の支援https://at-pa.seesaa.net/article/202004article_9.htmlを見てもあきらかです。
これからの時代、いろいろな困難や問題にに立ち向かうには、優れた創造力と他者への共感力が必要になります。アトリエは、そのための体験を受けられる場所になりたいと考えています。
「芸術とは、人生そのものであり、芸術を生みだすことは、人間を生きることである。」故岡本太郎さんの言葉です。
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芸術への国の支援
https://at-pa.seesaa.net/article/202004article_9.html
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