思春期の心の葛藤と成長

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 子育てに楽な時期はないと思いますが、思春期のお子さんを持つ親御さんは特に大変だと思います。

アトリエには、高学年の小学生から中高生まで、思春期真っ只中の幅広い年齢の生徒さんがいらっしゃいます。
不登校の生徒さんも毎年何人かおります。

たくさんの生徒さん達と接した経験や自分の思春期の頃を思い出しながら、思春期のお子さんへの考察を書かせてもらいます。
中には思春期に自分と上手に向き合えるお子さんもおりますし、お子さんの数だけ性格も思春期の状態も違います。あくまで私見の考えなので、参考にならないかもしれませんがご容赦ください。



 思春期のお子さんは、急激な心身の成長により自分自身で心をコントロールするのが難しくなります。
感受性がとても敏感になり、思考の視野がとても狭くなるからです。

感受性が敏感になると、他人の言動や反応にとても過敏になります。
「空気を読む」という考え方が自己より大切になるお子さんは、人と違うことに不安を感じて、安心感を得るために自分の考えを抑えてでも友人との関係性を優先します。

その正反対の場合もあります。自分が理解できない時、自分と違う考えに対して、理解しようとすることはなく極端に拒否的な反応をみせます。

日本では、「木を見て森を見ず」とい言葉があります。
「木を見ている者は森を見ることができない」というヨーロッパのことわざから来ています。
一本の木だけを見てしまい、森全体を見ていない、という意味です。
思春期には、思考の視野が極端に狭くなり、一枚の葉しか見えないこともあります。

大人になるとたくさんの事を経験したり知識がついてゆくので、いろいろな思考で柔軟に物事を考えられるようになります。他者の考えも取り入れて、理解しようとします。

しかし、自分の考え方が絶対であると盲信してしまうお子さんには、なかなか他者の言動や考えを理解できません。

大きくなった木は、太くしなやかになるので、強い風に耐えられます。
それに対して若い木は、まだ細く固いため、すぐに折れてしまう、傷つきやすい存在です。

盲信的に自分の考えを主張することはマイナスだけではありません。それは同時にひたすらに純粋でもあります。
純粋で独自性のある発想を持ち、大人には持ち合わせない爆発的な感性を発揮する者が時々現れます。
絵や音楽で活躍する若者が放つ輝きは、まぶしく美しくさえ感じます。

思春期の心の葛藤は、成長するためにはとても大切な過程です。
大きくジャンプするためには、深くしゃがむ必要があるからです。

とは言え、思春期の長いトンネルはいつ終わるか分からないため、本人にとってはとても不安でつらいものです。


 このモヤモヤした心の状態から解き放されるために、二つの事が有効です。

一つ目は、好きなものや自信を持てるものを見つける。

好きなものを集めるなどの受動的なことより、運動・音楽・美術・文学などの体験できることの方が効果的です。
身につけたり、達成することにより、自信をもてることにつながるからです。

人は自信がつくと多少の不安に思い悩まず、先に夢や期待を持って成長できるからです。

好きなものや自信があるものが一つでも多いほど、日常を楽しめます。

二つ目は、関わるコミュニティ(共同体)をふやすことです。

思春期が始まる頃、一番関わりが深かった家族というコミュニティーから学校というコミュニティーへ環境が変わってゆきます。
反抗期を経験した大人であれば、親からの説教が多い話より学校の友達との会話の方が楽しかった記憶があるはずです。

ただし、思春期の自分も相手もまだ不安定のため、深い理解や距離感をすぐに作るのは難しいものです。

学校であれば、クラスだけでなく、部活や委員会など。学校の外であれば、習い事を通して。
関わるコミュニティーが増えれば、それだけいろいろな他者と出会えます。
出会う人が多ければ、大変に思うことも増えるでしょう。

ただし、その中で、他者や自己に対する理解を深めることができれば、きっと大きく成長できるはずです。


 成長した後に見える景色は、きっと見たこともないような素晴らしいものが待っているはずです。
アトリエで出会う生徒さんにはそんな景色をたくさん見てもらいたいと、心から願っています。
 


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