『点字にふれる』視覚障害とアートの関わり
現在、東京・東陽町にあるギャラリーエークワッド(竹中工務店東京本店内)にて、
「『点字にふれる』-社会のダイバーシティを考える 6つの点から広がる世界 -」が開催されています。
視覚障害の方が楽しめるアートの現在が、楽しみながら学べる展示会です。
日本の視覚障害者の割合は、0.2%。
500人に一人の割合です。
ただし、世界に比べて認定基準が厳しいため、現実にはもっと多いようです。
目が見えなくても同じように世界を知りたいという欲求は、誰でも同じようにあると思います。
視覚障害とアートの関わりに興味を持ったのは、きっかけがあります。
若い頃、ボランティアの方々が開いた「手で触れる絵本展」に足を運んだことが始まりです。
当時、絵本作家になりたいという夢をもっていたので、興味半分で行きました。
展示会に展示されている絵本は、ボランティアの方が布で手作りしたものでした。
一冊作るのに相当手間がかかったはずです。
作られた方の努力と情熱には頭が下がります。
触感はけっこう楽しい感覚です。
小さい時は、砂場での砂遊びや泥団子作り。
大人になって、料理を作ったり陶芸で粘土をさわった経験がある人は、共感できるでしょう。
でも、布で作った絵本を楽しめるのは、その本を手に取ることができた一部の人だけです。
また、目が不自由でない人には視覚的な魅力は乏しいように感じました。
当時、目が見えても見えなくても楽しめる絵本がもしあれば、どんなに素敵だろうと思っていました。
ギャラリー入るとすぐに、全盲の美術家・光島貴之さんの作品が展示されていました。
触りながら鑑賞できます。
一番興味のある、触れる絵本のコーナーがありました。
現在、驚くべき進化を遂げていました。
自身が視覚障害者の岩田美津子さんが、わが子に絵本のよみきかせをしたいという思いから、「点訳絵本」を完成させていました。
「点訳絵本」とは、市販の絵本に塩ビシートが貼ってあり、絵も点字も楽しめる絵本です。
見える人と見えない人が一緒に楽しめる、画期的な素晴らしい絵本です。
岩田美津子さんは精力的に活動し、ボランティアの方々と「点訳絵本」を作り続けて、現在2,000冊を超えました。
「てんやく絵本 ふれあい文庫」として、全国に発送する活動を行なっています。
さらに、岩田さんの活動は広がってゆきます。
さまざまな出版社に呼びかけて、「点訳絵本」の出版と普及を目指しました。
どれだけの苦労があったかは計り知れないものがあります。
その結果、現在では40冊以上の「点字つき触る絵本」が出版されています。
光を当てて固める特殊インク(UVインク)で、立体的に盛り上げた特殊な絵本です。
通常の出版とは違う工程があるため、当然値段は少し高めになります。
一般の絵本との差額は、国が助成する取り組みがあると良いと思うのですが、・・・現実にはありません。
人が人のために工夫し努力するたくさんの善意で作られた絵本です。
絵本だけではなく、見える人と見えない人が一緒に楽しめる玩具・学べる道具もいろいろ並べられていました。
また、日本点字図書館に置いてある人気小説や料理本も並べられていました。
小説は膨大な文章で構成されているため、『容疑者Xの献身』(東野圭吾著)は、6冊にもなります。
制作者の尽力に頭が下がります。
浮世絵を立体にした作品もありました。
これらの展示物は、「手と目で見る教材ライブラリー」として、高田馬場にある「ふれる博物館」に普段展示されています。
今回の展示会は、ギャラリーのスタッフの方が丁寧に解説して下さったので、とても分かりやすく勉強になりました。
『点字にふれる』-社会のダイバーシティを考える 6つの点から広がる世界 -
https://www.a-quad.jp
♦︎会期 2024.7.26(金)〜10.24(木)
♦︎休館日 日曜・祝日
♦︎入館料 無料
♦︎会場 ギャラリー エー クワッド(竹中工務店東京本店内)
関連記事
「さわる」と「みる」がであう彫刻展
https://at-pa.seesaa.net/article/502225767.html
ジョン・ブランブリット-全盲の天才画家-
https://at-pa.seesaa.net/article/488110751.html
ギャラリーTOM-触って鑑賞できる美術館-
https://at-pa.seesaa.net/article/487734008.html
手でふれて楽しむアート
https://at-pa.seesaa.net/article/487307308.html
日本で一つだけの聾学校の造形芸術科
https://at-pa.seesaa.net/article/202203article_17.html
この記事へのコメント